電子書籍で本を読むことが多くなった。しかし、全ての刊行物が電子書籍になっているわけでなく、個人的に読みたいと思う本で電子化されていないことが多いのは残念なこと。著作権やら作家など様々な問題があるとは想像するけれど、現状はどうも中途半端感がある。
最近、電子書籍で読んで、面白かったのは、題名にもあるように、乾くるみの「イニシエーション・ラブ」。くりぃむしちゅーの有田哲平が「最高傑作のミステリー」とコメントしたという話を聞いて、読んでみる気になった。読むまでは、乾くるみという作家も知らなかった。
ミステリー小説といえば、事件が起こり、警察官や探偵がその謎を解き、犯人を追い詰めていくというパターンだと思っていたが、これは全く違う。途中、何故これがミステリーなのかと何回も思ったが、最後の最後にA面、B面の「たっくん」が別人であることに気が付き、もう一度読み直してやっと、なるほど!そういうことか、と。
A面、B面で登場する「たっくん」。最終ページの「……何考えてるの、辰也?」というセリフから、あれ?名前が違うと、A面とB面が別人物であることに、最後の最後に気が付いた。A面のたっくんは「鈴木夕樹」。夕樹(ゆうき)を、「たっくん」という愛称にしたところも違和感があったが、まさかまさか・・・。確かにキャラが少し違うかあとは思っていたが、途中恋愛小説だと思ったので、こんな心理の変化のあるかもと自分で納得させていたが、まさか別人物と思うはずがない。B面は、普通に「鈴木辰也」で「たっくん」。
さらに、時系列も引っかかった。A面→B面と思い込んでいたが、これも逆だったとは・・・。まさに、久しぶりに読後に「やられた!」と感じた作品だった。
この作家「乾くるみ」は、名前から当然女性だと思っていたが、Wikipediaで調べてみたら実は男性というから、またしてもやられた。「静岡大学理学部数学科卒業。別名義である市川尚吾では評論活動を行っている。やや歪んだ作風が特徴。」ということらしい。